『青空』

『青空』(伝説ペナルティその3)

『ふぅ…。今日、大野くんに会ったらどうしよう。
というより、嫌われたかな。』

私の名前は犬飼由美。中学3年生である。
私は昨日、クラスメイトの大野くんに告白された。
大野くんのことは好きだけど、
特別な感情があるわけではない。
期待させる答えを返しても悪いので、
私は大野くんの気持ちに応えられないことを率直に伝えた。

しかし…その後のことは考えてなかった。
昨日は大野くんが『そっか。ごめん。』と一言残すと、
踵を返して走っていってしまったのだ。

はっきり言って、気まずい。
会ったら、ものすごく気まずい。
人をフることがこんなにも大変だとは思いもしなかった。
てか、何で彼は私のことが好きなのだろう?
小学校時代には『のび太くん』呼ばわりされていた私だ。
どう考えても "女の子" として認識されていない。
そんな私のどこが良いというのだ??

―ガンッ

イタっ。
「おっはよー、由美! 相変わらず無表情ねぇ〜。
何も悩むことなんてないんでしょ〜?」
…思いっきり悩んでるんですが。

私の大切な頭を殴った鉛カバンをぶんぶん振り回して、
失敬なことをおっしゃってるコイツは
怪獣シンバル。小学校からの腐れトモダチだ。
「そんな”のび太くん”に朗報♪
今日、卒業写真撮影があるコト、忘れてるんじゃなぁい?!」
はぁ。”のび太くん”って、これまた古い話を…。
…て。

え?

卒業写真…サツエイ…?
おおう! そうでしたそうでした!!
私の大キライな写真サツエイがあるのでした!!!

「もう! 面白く無いわねー。ちょっとくらい驚いてみせてよ。」
「んあ!? 真剣に動揺してるんですけど!?」
「これまたご冗談を。」
あははと軽く笑って、シンバルは真剣に取り付いてくれない。
「ねぇ、シンバル。本当にサツエイって何時からだった?」
「あぁ!? ”シンバル”!? ”シンバル”言うなって
いつもおっしゃってるでしょ!」
「いや、そんなことはどうでもいいから。
本当に何時からだった? シンバル。」
「あぁっ! のび太めぇっ!! また”シンバル”申しおったな!!?
ワタクシにはお父上とお母上が名づけて下さった超絶可愛いお名前があるのよっ!?
きちんとお名を申さんか!!」
「犬飼由美。」
「あんたのじゃナ・イーーッ!!」
私はサッと身をかがめる。
さっきまで賢い私の頭があった場所には鉛カバンが飛んでいった。
『フフン。同じ手は食わなくてよ。』
怪獣シンバルは行き場の失った鉛カバンと一緒に独楽になって遊んでる。
「こらのび太ァ! ワタクシのお名前は― 」

「犬飼さん、おはよー!」
「あ、おはよー……!!」

不意に由美の横を "学ラン" が挨拶を一声、駆け抜けていった。
反射的に挨拶を返したが、由美に声をかける男の子は一人しかいない。

―大野くん…!?

声の主は大野くんだった。
彼も意外そうな顔をしてこちらを振り返っている。
しかし、それはすぐに笑顔に変わった。
「ツバサ、みゆきちゃん、見つけたよー!」
大野くんと私だけがわかる漫画の話だ。
私も即座に切り返す。
「全部ー!?」
「うん。3箇所、全部ー!」
大野くんは、私の方に親指を立てた腕を一度伸ばすと、
学校へ走っていった。

大野くんの向こうに広がる空がいつもより青い気がした.

--?時間??分??秒--
(04/3/5)


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