集合写真

『集合写真』(伝説ペナルティその1)

私の名前は犬飼由美。中学3年生である。
今日は卒業アルバムの写真撮影日だ。
そして今、まさに目の前で隣のクラスが写真を撮っている。
しかし、正直、私は写真というものが苦手だ。

小学校の頃などは、写真のせいで
一年中男子から『のび太君』と呼ばれるハメになってしまった。
彼ら曰く、修学旅行の集合写真で目をつぶってしまった私は
いつでもどこでも眠れるのび太君なのだそうだ。
女の子なのに『のび太”君” 』とは我ながら不名誉なことだと思う。

ともかく私は写真を撮られるのが嫌いだ。
学校の友人達は近くのゲームセンターで、
お金を払ってまで写真を撮ってくるが、
私の場合、そんなことはアリエナイ。
そもそも皆は、何で写真を撮られたがるのだろう?
自分が写ってる写真を見ても恥ずかしくないのだろうか?
私なんて、幼稚園の頃の写真を見せられたって
恥ずかしいというのに。

前のクラスの撮影が終わった。
次は私たちのクラス。
先生が前に立ち、私たちを撮影場所まで誘導する。
私たちは背の順に並び、先生の後をついていく。
私はクラスで少し高めの身長なので、列の中でも少し後ろの方だ。
撮影場所に来ると先生は立ち止まった。
しかし私より前に並んでる連中はおしゃべりに夢中で、
どんどん前につめて行く。アレはつめすぎだ。
とりあえず私は先生やカメラマンからとやかく言われるのが好きではないし、
言われてから位置を修正するほど阿呆じゃないので、
大体の位置にめぼしをつけ、立ち止まった。

「そこの君たち、もっと幅をあけて!」
案の定、前の連中に指示が飛んだ。
『フフン』心の中で少し得意になる。
目測位置も間違っていなかったようだ。
ともかくここまできた今、そんなことはどうでもいい。
今は『のび太君』と呼ばれる失態を演じないことだけが重要だ。
目を開けることに専念しなければ…。

私は目をしっかり開け、カメラのレンズに焦点を合わせた。
カメラマンはレンズを覗き込みながら細かな指示を送る。
「真ん中の君、ちょっと右に寄ってー。はい、そう!」
「後ろの君も、ちょっと右にー。はいー、そう!」
私はいきなりシャッターを押されても困るので、
目を開けることに専念する。目を開け続けるのは正直つらい。
カメラマンは色々と指示を出している。
「前の列の人達は手をグーにしてね!」
「立ってる人達は手を前にしないでねー」
正直しんどくなってきた。早く終わって欲しい。

とか思ってたら、カメラマンがこっちの方を向いて
何か言いだした。
「1たす1は〜?!」
カメラマンに何か言われてしまった。
どうやら私に『笑え』と言いたいらしい。
まぁ、そりゃそうだろう。
今の私は目を開けることで精一杯で、
笑う余裕なんてとても無いのだから。
しかし私が笑わないと、あのカメラマンは写真を撮らない。
私は気合で笑顔を作った。

カメラマンが全体を見て笑う。
ゴールはもう、すぐそこだ。
「はい、いきまーす!」
カメラマンがレンズを覗き込み―

―パシャッ

こうして私はこの長く苦しい写真撮影に勝利した。

****

後日できたアルバムに写っていた
私は『ドラえもん』だった。


--?時間??分??秒--
(04/3/3)


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